セッターN君

『魂』を揺さぶる読み物


セッターN君・・・by芭麗人さん2005-07-31


今日私のチームは地元の小さな大会に参加しました 燃えるような暑い体育館の中で試合が行われました(昨日の県の試合まで三年生が残っていましたので・・その後学校に戻って今日の為に新チームの練習をしました)
・・チームのセッターを務めたのは4人の二年生の中で一番身長も低く技術も劣っていると思われたN君でした。
N君は昨年来他の同級の3人が何等か形でゲームに使われている中で先輩の球拾いをするために走り回ることだけが存在価値のように私の目に映る生徒でした。
(練習試合などでたまにサーブを打たしても、まさしくそのことでピンチになるような。ピンチサーバーでした)ですので当然新入部員がきたら使われることはあるまい・・その時には彼の居場所をどうするのか・・私はこの正月頃は多少憂鬱でした。
しかし幸か不幸か新入部員5人の中には一人として満足にパスさえできるものも身長も170を超えるものもいませんでした。
『新チームではNをセッターにしよう』私は思いついたように言いました。
それは周りのものそして彼を知る全ての人が「まさか」と言うようなものでした。
私はこんなことを思ったのです。
Nの今置かれている立場は、まさしく指導者としての今の自分自身と同じではないか・・私は以前セッター作りに時間をかけてきた。幸いなことに県を代表とするようなセッターが何人か育っていった・・しかし大した指導も出来ない私のもとでそんな選手が育ったのは・・それだけ能力の高い選手達だったのであろう。でも今の私の置かれている立場は・・そして今の私にまかされた選手はこのN達なのである・・私が出した結論は『もしこのNがセッターとして活躍出きるような選手になるのなら』・・それは私自身の自信にもつながるのであろう。と彼と自分自身の能力の可能性にかけることにしたのです。
さて彼は今日コートを走りまわって必死にトスを上げました・・当然のようにはじめての公式戦(?)で球は時にあっちにいったりこっちにいったりしました。しかし彼の一生懸命のトスをこれまた一生懸命他の選手が打ちました(それは昨年の入学以来自分の扱いに一言も文句を言わずにもくもくと球拾いを続けてきた彼に対する畏敬の念が生まれていたのでしょう)・・失敗が続くと彼は悔しさで涙を目にためているようでした・・しかし明らかにNのトスミでもスパイカーは彼の肩を叩き『N悪い打てなくて・・もう一度上げて』  これがチームワークなのでしょう・私は大満足でした。
 結果3位になることがで来たのです
(10校足らずの田舎のチームが集まったこの大会は勿論誰も注目するような大会ではありません・・全国大会など夢のまた夢のようなチームが集まってのものです)
(その中には『10数年ぶりに6人が揃ったので参加した』というチームもありました。この日の為にユニフォームを揃えたということでした。そんな真新しいユニフォームを着て彼等が開会式で照れくさそうに上気した顔で整列しているのを見ると・・それだけで私は感激してしまい目頭が熱くなってしまうのです)

私は最後の表彰式に胸を張ってNが立っているのを見た時・・これが私の見ようとした『夢』そのものではないのか・・そしてそれは私の中で代々木の体育館に整列しているかのように思えたのです。
帰りに偶然あった他の会場で試合を終えた女子バレー部の生徒が『先生試合はどうでした?』続けて『N君は毎日朝早く学校に来て一人で練習していましたよ』と・・私はまた胸が一杯になりました。 
 こんな選手との出会いが私をますますバレー好きにさせるのです。
『夏に鍛える』
まだまだ夏は続きます・・選手と一緒に汗と涙を沢山ながせるような熱い夏にしたいと思っています。

私は今までの三十数年  実際には何度も何度も挫折をしていますし、練習なんてしたくなかった日々もあるのが事実です。
 こんなこともありました。
ある正月必勝祈願の初詣に行った神社に奉納してある絵馬の『バレー』と言う字に気が付き、それとなく見るとそれが『N男が今年一年元気にバレーが出来ますように・・』・・N男・・それは部員でした。私は母一人で育ててきて選手には到底なれぬけど毎日朝早く出て遅く帰る子供の元気を祈る 母の顔を思い・・自分の祈願も『祈る全国出場』から『部員が今年一年元気にバレーが続けられますよう』と変えたこと・・・そんな素晴らしい沢山の出来事があるから私はバレーを続けることが出来たのだと思います。
何度も言うようですが。
勝つために沢山の犠牲(?)を払いながら努力を重ねた中にバレーをしてきた中の出来事、出会いがバレーをする素晴らしさだと思っているのです。そして負けたことの中から沢山学ぶことも出来ましたし自分の挫折から人に対する思いやりを学ぶことも出来たような気がします。

バレーこそキング オブ スポーツだと信じている    『バレー馬鹿』・・です。
部活動 担当の一人 芭麗人でした。

管理人より・・・コメントがございましたら下のコメント欄へどうぞ。「投稿する」ボタンを押すとコメント入力画面になります。





サイト名: へりくつバレーボール   http://www.herikutu.com
この記事のURL:   http://www.herikutu.com/modules/episode3/index.php?id=4