スパイクレシーブ隊形の分類

 良く使われているスパイクレシーブのフォーメーションは、大きく三つに分けられます。マンダウンフォーメーション、マンアップフォーメーション、ボックスフォーメーションの三つです。これらはサイドへの二段トスや平行に対してどのように対応するかという視点で分類したものです。以下ではそれぞれの簡単な説明と、利点、欠点などを概説します。

(この分類は基本的に『セリンジャーのパワーバレーボール』―ベースボールマガジン社に従っていますが、一部変えている点もあります。)

マンダウンフォーメーション

上からの図―マンダウン

 右図はレフト攻撃に対するマンダウンフォーメーションの図です。ライト攻撃に対しては丁度左右逆の体型をとります。

 このフォーメーションは最もポピュラーなフォーメーションであり、トップレベルではほとんどのチームがこれを採用しています。

 このフォーメーションの特徴はフェイントカバー専門のレシーバーを置いていない点です。ブロックの裏のフェイントはライトレシーバーが突っ込んで拾い、コート中央へのフェイントはレフトの前衛と後衛のふたりでカバーするのです。

 そしてフェイントカバーを置かない代わりに、バックセンターのプレーヤーををワンタッチボールを拾いやすい場所に置くことが出来ます。図で一人だけコートの外に出ていますが、その選手のことです。ブロックが二枚揃うとワンタッチボールがその場所に良く飛んでいくので、バックセンターはブロックの状態を見極めながらスパイクレシーブに参加するかワンタッチをケアするかを選びます。

 ブロックが低いチームは、比較的フェイントされることは少なく、逆にブロックワンタッチアウトが多くなりがちなので、このマンダウンフォーメーションを取るべきでしょう。

マンアップフォーメーション

上からの図―マンアップ

 マンアップフォーメーションではフェイントカバー専門の選手を一人置きます(右図参照)。その選手がレフト平行の時もライト平行の時もフェイントカバーに入るのです。必然的に、セッターがトスを上げる時にはコート中央に位置することになります。

 実はこのフォーメーションには弱点があります。わざわざフェイントカバー専門の選手を置いているのだからフェイントには強いはずですが、なかなかそうはいかないのです。ブロックの影になるためボールが見えず、意外とフェイントを決められてしまうのです。

 ところが、今年(2000年)の春の高校バレーで、この弱点をカバーできる変形マンアップフォーメーションを採るチームがありました。八王子実践高校です。具体的には、バックセンターは最初マンダウンの位置で構えておき、平行にトスが上がった瞬間に前に走ってマンアップの位置どりをする方法です。

 この方法は、スパイカーのフォームを走ってくる途中で良く見ることができ、足がイヤでも動くのでかなりフェイントに強いシステムだと言えます。但し、そうやってあげたボールをコントロールするのはノーマルマンアップに比べて難しいです。

 また、オープン攻撃に対してあまり早くフェイントカバーに入ると、結局ノーマルマンアップと同じくスパイカーが見えなくなったりしますので、前に上がるタイミングも含めて練習する必要があります。

ボックスフォーメーション

上からの図―ボックス

 (『セリンジャーのパワーバレーボール』では、下で説明する「オフブロッカーマンアップフォーメーション」もボックスフォーメーションに含めている様ですが、このHPでは両者を区別しておきます。)

 このフォーメーションでは、レフト攻撃に対してはライトレシーバーがフェイントカバーに上がり、ライト攻撃に対してはレフトレシーバーがフェイントカバーをします。そしてバックセンターが走ってストレートレシーブに入ります。レシーバーの4人が長方形に並んでいるので「ボックス」と呼ばれる様です。

 ボックスフォーメーションはストレートに二人レシーバーがいるため、サイドブロッカーが弱い時には非常に役立つフォーメーションではあります。センターブロッカーが強く、クロスコースをしっかり止められるならボックスフォーメーションを採るのもよいでしょう。

 しかし、やはり弱点もあります。それは速い平行に弱いという所です。バックセンターがストレートレシーブに入る前に打たれてしまうからです。ストレート攻撃に強いはずが、一転して最弱になってしまうのです。とはいっても、速い平行対策をしっかり練習しておけばマンダウンフォーメーションと併用するなど対応策はあります。多少複雑になりますが。

 さて、以上の三つが基本のフォーメーションですが、その他にも亜流的なフォーメーションがありますので、以下で二つ紹介します。

オフブロッカーマンアップフォーメーション

上からの図―オフブロッカーマンアップ

 「オフブロッカー」とはブロックに飛ばない前衛プレーヤーのことです。そしてオフブロッカーマンアップフォーメーションとはそのオフブロッカーがフェイントカバーに入るフォーメーションのことです。(右図参照。)

 このフォーメーションは前もってこのフォーメーションを採ると決めて使うことより、状況により強いられて使うことのほうが多いでしょう。その状況とは、例えばレフトブロッカーが相手Bクイックに飛んだとき、インナーのレシーブに下がれないので仕方なくフェイントカバーに入るといった状況です。

 このフォーメーションでは比較的フェイントは上がりやすいのですが、レシーブ後に前衛レフトがオープンに開きづらいという欠点があります。もし常にこのフォーメーションを使うのであれば、レシーブから切り返す練習をかなり積むべきです。

ボックス&オフブロッカーマンアップ

対レフト
対ライト

 これはレフト攻撃に対してはボックスフォーメーションを用い、ライト攻撃に対してはオフブロッカーマンアップを使うシステムです。右の図の上が対レフト、下が対ライトのレシーブ体型です。

 このシステムの長所は、1.後衛のレシーバーがあまり動かずに済むので、ポジションニングの微妙な調整が可能なこと 2.バックライトにセッターを置けばつなぎがやりやすいこと 3.ノーマルなオフブロッカーマンアップと違い、レフトオープンに開きやすいこと の三つがあげられます。

 短所としては、1.ワンタッチ専門のレシーバーがいないこと 2.基本の守備体型が独特で、速攻のレシーブが弱くなりがちなこと ぐらいでしょうか。但し、1.はマンダウンシステム以外は同じことですし、2.に関しては速攻をライト側に打たせるようブロックすれば逆に速攻に強くなる可能性もあり、弱点とまでは言えないでしょう。

 従って、このフォーメーションはマンダウンフォーメーションの次に使えるフォーメーションだと思いますがいかがでしょうか?

(2000年3月)