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スイングの習得について

 サーキュラー・アームスイングの選手に腕の振り方について聞いたことがあります。「自分ではスイングの時に腕を回している意識などない、ただ腕を振り上げているだけだ」という答えが返ってきました。私たちがサーキュラー・アームスイングの選手のフォームを見て腕を振り回しているように感じることと感覚のずれがあります。

 ここで簡単な算数の問題。左の絵のようにA点からB点まで行くには無数の経路がありますが、最短経路は赤線の直線です。この直線経路を行くのがもっとも効率よい無駄のない移動です。


 ヒトが手や足を動かすことも点から点への移動の繰り返しと考えることが出来ます。ヒトの脳が運動を学習する時に始点(A点)と終点(B点)があらかじめ決まっている場合、反復練習を行うことにより、小脳が運動の修正を繰り返して、始点(A点)と終点(B点)の間の最短経路を通り、かつ滑らかな動きになるように学習されていくことがわかっています。
…と難しく書きましたが、これは机の上のコップを乳幼児は上手く取れないのに対して、大人は何も考えなくても手を一直線に動かし、最短距離で上手く取れることを言っています。大人も最初から上手く取れていたのではなく子供の時の(気の遠くなるような)反復練習の末に出来るようになったのです。

 スイングも同じ学習パターンで身についていくと考えられます。スイングの練習では体で常にこの「最短経路の問題」を解きながら、滑らかなスイングを身につけていくのです。

サーキュラー・アームスイングは腕を「回す」スイングではない

 踏み切りの時の肘の位置を始点のA点、バックイングの時の肘の位置を終点のB点と考えます。A点からB点に至る動きの経路は無数にあります。


‘「D」型’サーキュラー.....サーキュラー.....
(1)屈曲
(2)水平外転.....外転.....

 左は「D」字を描く「D型」サーキュラースイングですが、これは肩の「屈曲」→「水平外転」という二段階の動きをして腕が終点に向かいます。一方、腕が円を描くサーキュラー・アームスイングでは「外転」という一段階の動きでバックスイングが完了しています。

 イエリッチ選手のスイングです。外転によるサーキュラー・アームスイングをしています。このスイングでも1コマ目では手が前に出ていて前への引き上げの意識があることが見て取れます。その後、腕は外転して一気にバックスイングの位置に到達しています。外転による円を描くサーキュラー・アームスイングでも選手は先程示した

【原則1】腕は体の前で引き上げる

【原則2】バックスイング=腕をネットの反対に引く

という意識で腕を引き上げているのだと思います。そして反復運動を行っていく内に肘が「屈曲」→「水平外転」という二段階の動きから最短距離を動く効率のよい「外転」という一段階の動きに置き換わっていくのではないでしょうか?私たちはサーキュラー・アームスイングの選手を見て「腕を振り回している」と思いますが、当の本人たちに振り回す意識はないのです。サーキュラー・アームスイングの腕は(意図的に)「回す」のではなく(結果として)「回る」ものだと考えます。

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