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「サーキュラー」は嫌われる?

 今回、一般には余り用語として知られていない「サーキューラー・アームスイング」が実は多くの選手が実践しているスイングであり、メリットも大きいことを書きました。しかし、このスイングは指導の現場では敬遠される事も多いようです。「腕を振り回しすぎだ」「腕が低い位置から出ているために打点(肘)が下がる」「筋力にすぐれ、パワーも十分な外国人選手であれば問題がないが日本人には向かない」「フォームが大きくてスイングに時間がかかり、速攻には不向きである」等々の批判を目にした事があります。サーキュラー・アームスイングに対する誤解の原因は「D型」のように自分ではサーキュラーとは意識せずにスイングしている人が多いことと、先入観で見たサーキュラー・アームスイングに対する印象の悪さです。今までの話を読んで頂ければ批判の多くが的外れであることがわかると思いますが、最後の「速攻に向かない」という批判に対しては正否を次の二つの画像で確認していただく事にします。

丸山(江上)由美選手(「D」型サーキュラー)
三橋栄三郎選手(「肩下」型のサーキュラー)

バックスイングは「無意識の動作」である

 かつての日本の名センタープレーヤーがバレーボール雑誌にスパイクの連続写真の解説を寄せて「『バンザイ』の状態からフォーム作りに入っている。このため、より高い位置でフォーム作りができ、ボールが打つポイントにきたら腕を振り降ろすだけの状態となっている。」と書き、ストレート・アームスイングやボウ・アンド・アロウ・アームスイングを推奨する表現をしていました。「あれっ?」と思ったのはこのプレーヤーの現役時代のフォームは手を下げた状態からバックスイングする典型的なサーキュラー・アームスイングで解説のフォームとは程遠い印象を受けたからです。人に勧める「建前」と自分の実際のフォームの「本音」の差かもしれませんが、案外自分のフォームは自分ではわからないものです。同じ様な事は野球でもあり、誰がどう見てもサイドスローの投手がプロ野球チームに入団して人に指摘されるまで、ずっと自分はオーバースローだと信じていたという例もあります。

 人の動作には「意識的な動作」と「無意識の動作」があります。レシーブで前後に走る動作やブロックジャンプなどは意識的な動作ですが、バックスイングは無意識の動作に入ります。バックスイングを意識的に行えば、力んだスイングとなり、滑らかな素早い動きとはなりません。これはスパイクを身につける上でも問題になり、バックスイングが無意識な動作の領域であるためにスイングを変えたいと意識してもなかなか上手くいきませんし、他人への指導も難しいのです。しかし、スイングと体幹についての考察をしたように「スイングが体幹の動きに連動して自然に決まって来るのでは?」と考えると、体幹の動きに注意を払う事でスイングが変わって来る可能性があります。スパイクの分類を考える今回の投稿の領域からは外れますから、この点については近い内にあらためて投稿したいと思います。

 この稿を完成させるにあたり、バレーボール学会(http://www.jsvr.org/)内の「バレーメカニクス・メーリングリスト」に参加している方々の示唆に富むご意見および画像をいろいろと参考にさせて頂きました。あらためてここで感謝いたします。

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